気象観測によるDharuwa発生危険度の判定:
1 NEXAGの気象データからわかったこと:
(1) Sankhuに設置した気象観測装置-NEXAG-で、気温と相対湿度の毎時データを取得します。
(2) このデータを使って、Dharuwaの発生危険度を示すDSV(Disease Severity Index)を計算します。
(3) Potatoが発芽した時点から、DSVの計算を始め、DSVが18になると、Dharuwaが初発する可能性が出てきます。
(4) この時が、農薬を散布する最適のタイミングです。
以下に、Sankhuにおける2021年の夏Potatoと、冬Potato生産期間のDSVの推移を示します。
2 夏PotatoのDharuwa危険度
9月15日にPotatoが発芽した場合、DSVは、たった2週間で18を超えます。
Fig.1 夏Potatoの植付け時期の違いとDahruwa発生危険日の推移、Sep 15, 2021
Seed Potatoの発芽日を9月25日とした場合、DSVが18に達するまでには1ケ月ほどかかります。
したがって、Seed Potatoを植える時期を遅くすることで、夏Potatoの疫病発生リスクは低くなります。
Fig.2 夏Potatoの植付け時期の違いとDahruwa発生危険日の推移、Sep 25, 2021
Seed Pototaが植えつけられる9月は、相対湿度が80%を超える日が多く、平均気温が高い日が続きます。
高温多湿の条件下で作付けされる夏Potatoの疫病感染リスクは、高いと結論できます。
ここで計算されたDSVは、30℃の気温が一定時間続くと真菌が死滅する条件などを考慮していません。
Sankhuは、高温時に湿度が低く、心地よく感ずる日があります。
このような日は、朝露や降雨によるPotatoの葉面の濡れは即座に乾きます。
このSankhuに固有の気象条件は、疫病の発生を抑制する可能性があります。
長期的な気象と疫病初発日の観測によって、Sankhu固有の特徴の明らかにすることができます。
3 冬PotatoのDharuwa危険度
もっとも早い発芽日は、上流域で1月初旬、中流域では2月初旬です。
2021年の冬Potato生産期間において、DSVが18を超えることはなく、気象条件によるDharuwa発生の可能性はありませんでした。
Fig.3 冬Potatoの植付け時期の違いとDharuwa発生危険日の推移、Jan 2, 2022
4 考察
気象観測装置-NEXAG-を設置して7年が経ちました。
これまでのDSVの計算結果から、SankhuのPotato生産における農薬使用の改善は、以下の「仮説」を立てることができます。
この改善策には、病気を持たない良質のSeed Potato、風通しを良くするため株間を広くするなどの栽培法を取り入れなければなりません。
(1) 夏Potatoの疫病発生リスクは、極めて高い
–> 農薬を散布する場合は、DSVが18になった時点で農薬を散布する。
2回目以降の散布間隔は、BLITECASTの第2の指標に従う。この指標は過去10日間の降雨量から計算される。
(2) 冬Potatoは、気象要因による疫病発生の可能性は小さい
–> 農薬は不要の可能性が高い
DSVの計算結果は、Sankhuの先進的な農家が指摘していた「冬Potatoは無農薬が可能かもしれない」という発言に、科学的根拠を与えています。
この発言は10年前の発言です。
疫病危険指数DSVによる疫病対策は、Potato以外の他の作物(トマト)にも有効です。