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5. サクーにおける疫病初発危険日の予測結果

 Nexag改良機の設置作業は2020年1月21日から開始され、2月2日になって気象観測が始まりました。以下は、BLITECASTの奇病危険日の予測結果です。

2020年 冬バレイショ

 サクー中流域での冬バレイショの発芽は2月初めですので、2月2日からのデータを使って、中流域の疫病発生を予測します。2020年のサクーの冬バレイショ期間の疫病危険指数DSVの推移を示したのが下図です。DSVは小さな値で推移し、18を超えることはなく、気象条件による疫病発生の危険性はないことを示しています。

      Fig.5

2020年 夏バレイショ

夏バレイショについては、9月20日~27日にフィールドサーバの通信Simの課金不足が原因でデータの送信が中断し注3)、予測期間は9月20日以前に限定されました。上流地域でもっとも早い夏バレイショの発芽日9月1日から、わずか13日でDSVが18になっています。

      Fig.6

2021年 冬バレイショ

 2021年はフィールドサーバが順調に稼働し、通年の気象観測データを得ることができました。2020年と同様に、冬バレイショと夏バレイショの生産期間では疫病発生の気象条件が大きく異なることがわかります。

 冬バレイショの種イモ植え付けは上流部から始まり、早霜を避け、早い圃場では12月中・下旬に植え付けます。その後、下流域に向かって徐々に植え付けされ、遅いところでは2月に植え付けされます。もっとも早い発芽は上流部で1月初旬、中流部で2月初旬になります。

 2021年の冬バレイショ生産期間においてDSVが18を超えることはなく、気象条件によるバレイショ疫病発生の可能性はほとんどないことを示しています。

      Fig.7

2021年 夏バレイショ

 8月下旬に上流部の圃場では、水稲収穫直後に畝をたて種イモを植え付けます。高温あるいは保水に対処するためか、刈り取ったばかりの稲わらで日光を遮蔽するなどの工夫をして、発芽を促進する圃場があります。このような圃場で9月1日に発芽したとすると、わずか2週間後の9月15日にDSVは18を超え、疫病発生初発の予測日に到達します。

 発芽日を順次遅らせて、9月15日,9月25日に設定してDSVの推移を示したのが次の2つの図です。15日に発芽した場合は9月1日に発芽した場合と同様、2週間で18を超えます。9月中は相対湿度が80%を超える日が多く、平均気温を高い日が続き、夏バレイショの疫病リスクは非常に高いことを示します。

 したがって、水稲収穫後、高温多湿の条件の下で作付けされる夏バレイショの疫病感染リスクは高いと結論できます。但し、30℃の気温が一定時間続くと菌が死滅する条件は、ここでは考慮していません。サクーでは、高温にもかかわらず、湿度が低く、心地よく感ずる日があり、そのような時にはバレイショ葉面の濡れは即座に乾きます。このようなサクーに固有の疫病発生の阻害要因を、時間単位の気象観測値によって明らかにする可能性が大きく残されています。

 仮に上流部で種イモの植え付けを遅らせ、発芽日を9月25日とした場合、DSVが18に達するまでには1ケ月ほどかかり、疫病発生リスクはかなり低くなります。一方、作付けをさらに遅らせ、10月に植え付けると、疫病とは別のリスク、初霜被害による生育障害の可能性が生じます。

 1990年代には海外からのトレッカー・観光客が増加する11月に、カトマンズのカリマティ野菜卸売市場のバレイショ価格が高騰しました。近年では、価格が高騰するとインドなどからの輸入量が増加するため、価格の季節変動は平準化しつつあります。したがって、夏バレイショは疫病リスクを避けることがより重要な課題となっています。

Fig.8  植え付け時期を変えた場合のサクーにおける疫病発生危険日の推移、2021

2022年冬バレイショ

2022年についても、2021年と同様の結果が得られます。

      Fig.9

2022年夏バレイショ

2022年夏は、観測が遅くなった。(グラフ色は変更となっているので注意すること)

      Fig.10

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