Ⅰ 私たちの抱える問題
1. 農家はPotatoesの品種特性を重視していない。
農家は、品種を選択する際、気象などの地域特性や市場動向を十分に考えていない。産地としてのブランド化を目標とする考え方も現在は無い。
2. 化学肥料の使用は科学に従って行われていません。農家はほとんどが尿素(N)を使っているようです。
そもそも尿素以外の肥料は高くて買えない(未調査)?9月21日のZoom会議でのスンダールさんの発言では、DAP, Potashはいまだ手に入らない(要確認:Sundharさんや農家の話を聞く必要がある。)
3. 農薬(毒物)を使用する場合、量や方法は考慮されていない。Potatoesには殺菌剤、 抗生物質?や微量要素剤がよく使われます。 上記 3 つをすべて一度に使う農家もいます。
農薬を混合希釈すると、相互に反応(中和による沈殿物生成・スプレヤーの目詰まり)する可能性はあります。
2016年のインタビュー調査時には、殺菌剤を「ビタミン剤」と答えた農家もいましたが、いまだに農薬の効果について正しい情報が伝わっていないようです`
4. 農薬を散布する際に、安全対策を講じる傾向はありません。
NPOは、JICA草の根技術指導で農薬の適正な利用(適時、適量)方法を実践的に伝えようとしました。希釈の手順、散布作業機の扱い方、安全対策としてマスク、散布時の服装=素肌禁止、ゴム長靴着用、女性は散布作業に従事しないなどを奨励し、農業グループで実践しました。しかしながら、それは一時的な実践で、定着しませんでした。
ちなみに、近年のCovid19感染対策時でも、ほとんどの人がマスクを着用しなかったそうです。Covid19は感染することによって感染者に抗体ができますが、農薬の影響は長期間にわたります。これまで、「Mancozebは女性ホルモンに影響しない」とする研究結果はありません。今後、農薬使用による健康への影響について研究成果を伝えることが重要です。
タバコによる健康被害対策としてタバコのパッケージに「醜い肺がん」の写真を使った例がありますが、Mancozebは見えないところで起こっている可能性が高いのです。
5. 土壌改良のための堆肥の使用はほぼゼロです。
鶏糞や化学肥料は土壌のpHに問題を引き起こすようです。
Sankhuでは1990年代、稲わらと鶏糞で堆肥が生産され、Potato生産のために使用されていました。その圃場で堆肥が生産され、作物にとって重要な栄養要素を供給しました。たい肥の窒素成分が土壌で吸収しやすくなるためには、長い時間が必要です。肥料の効果としては遅効性がある、といいます。したがって、たい肥だけを使用すると、初期成育時には見劣りします。
したがって、その圃場にあわせて配合します。
1990年代末になって化学肥料の尿素が使われるようになりました。化学肥料には速効性があります。
現在、農家は肥料を購入して、作物に必要な栄養素を購入しています。Chickin Compostと尿素が主な肥料です。増収を目的として、以前より多くのNitrogen成分を使っています。しかし、尿素を過剰に投入すると、「徒長」といって、葉茎ばかりが大きくなって、バレイショの大きさは小さくなり、収益は減少します。そして窒素過多の土壌はさまざまな問題を引き起こします。
増収のためには、Nitrogenだけではなく、Phosphate, Kariumが必要です。作物生産にはN,P,Kの栄養素をバランスよく与えることが必要です。DAPとPotashを購入する必要があります。
ChickincompostにはPhosphateが含まれていますが、栄養成分量は印刷されていますか?N,P,Kの栄養素をバランスよく使わないと、投入した肥料が無駄になります。生産量は減り、品質が低下し、農家の販売価格は下がります。
2015年にサクーの精密な土壌分析をしたことがあります(土壌分析する民間機関はカトマンズにあります)。pH計、EC計、試験紙を使って簡易な分析をしましたが、特段の問題はありませんでした。土壌検査料は高価で、標準的な検査項目では、1サンプル5,000Rpsほどかかりました。
作物の葉や収穫時のバレイショを観察すると、土壌の状態がわかります。成長過程で葉の色はどんな色でしょうか?枯れた茎葉はありませんか?できたバレイショにscab、かさびたがありますか?
昨年、サクーではバレイショ「そうか病」が問題になっていることを知りました。そうか病はpHを測り、pHが6.5~7.5になるように、石灰などを使って対策できます。石灰散布した後、次の作物を植えるためには最低2週間が必要です。稲刈りが終わって、すぐに夏バレイショを植える場合は、その時間がありません。休耕し、緑肥作物を植えます。一時的には減収しますが、土壌の劣化に対する有効な手段です。
昨年、scabが問題になっているLaxmmiさんの圃場で、pH 3.5という強酸性の結果が出ました。しばらく使ってないpH計を使用したので、結果に不安がありました。今回、新しいpH測定器でpHを測る予定です。検査は稲刈りが終わるのを待たなければなりません。
6. 種Potatoesの重要性は、注目されていません。
冬と雨季にジャガイモの生産にどの品種を使用するかについての情報がありません。
疫病に強い種子が必要であり、弱い品種と混植すべきではありません。Potatoesの病気に耐えられる品種と耐えられない品種があります。
ネパールの品種は世界の研究機関と連携してテストが行われており、新しい品種は耐病性が改善されています。しかし、その品種が市場で売れるかどうかは別です。現在、ポカラでMS42-2が売れているのは、その地域にあっているためでしょうか?それとも、「おいしい」からでしょうか?確かめてください。なお、作物は連作を避けるのが基本です。また、病害菌のない種芋を使い、品種にあった栽培法を採用することが必要です。
北海道のバレイショ品種の例で、「メイクイーン」「ダンシャク」は130年以上前の品種で、しかも「ダンシャク」は耐病性の低い品種です。しかし、ブランドとして定着し、現在も作り続けられています。品種の特性だけでなく、その地域の気象、土性などが重要です。とくに重要なのは農家の栽培技術の向上です。農家の努力があって適地適作が実現します。
7. 地方自治体はチャクラ(小集落)、そしてブロック(より広域の単位)で適地適産を推進すべきである。 それによって、バレイショ疫病リスクを減少させることができます。
(注:2016年、当時、バグマチ県の農業省大臣に対するスリエさんのアドバイスです。” Prime Minister Agriculture Modernization”のプロジェクトは、各県で生産を強化すべき作物を定め、ネパールの農業を発展させようとする国のプロジェクトです。バグマチ県ではPotato生産を強化すべく、Bhaktapur にPotato zone office を設置しました。このオフィスはNARC(National Agricultural Research Center)に置かれています。)
北海道では、「大正メイクイーン」、「今金ダンシャク」などの地域ブランドがあります。地方にあった品種や栽培方法の改良によって、初めてブランド化ができます。
8. Potatoesの生産量を増やすには、健康で新しい世代の種Potatoesが必要です。
種Potatoの情報、供給体制の状況として、試験場、検査機関、農家の連携が依然最悪であるように思えます。なにより、県レベルでの種Potatoの生産・検査体制の整備が必要です。また生産する農家への価格保証が必要です。日本の例が参考になるでしょう。