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6.気象情報による疫病初発日の予測と殺菌剤散布回数の適正化

6-1. サクーにおけるFLABSによる疫病発生危険期の算出 ( 2016/2017 )

 多くの国で気象情報による予測手段がIPMで採用されているが、ネパールでは、気象情報は利用されてこなかった。農民の注意深い観察こそがすべてではあるが、「雨が降っているとき」「曇りが多いとき」といった状況判断だけでは、地域の疫病対策はむずかしい。まず、誰もが判断できる客観的な気象データを提供することが肝要である。本技術指導ではサクーにおいて農民が自ら気象を観測、記録することから始めた。(IPMは見直しが必要とされているが、その内容は不明である)

 2016年夏バレイショ生産期間のサクーでの気象観測結果とFLABSによる感染好適指数の算出結果をFig.27、Table 11に示した。図の上段の折れ線グラフは日平均気温(℃)と日平均相対湿度(%)、中段の棒グラフは日降雨量(mm)の推移である。下段の折れ線グラフは、それぞれ異なった萌芽日(萌芽率50%以上に達した日)を始点として、FLABSによる感染好適指数を計算した結果である。中央には西洋暦とネパールのビクラム歴を併記した。

 萌芽日が9月5日、9月15日、9月25日の場合、疫病危険期到達日はそれぞれ9月17日、9月25日、10月5日であった。9月下旬までは、およそ10日間で感染好適指数が21を超え、その日から2週間以内に疫病が発生すると予測された。一方、萌芽日が10月5日になると、感染好適指数は21に達せず、10月14日の場合は1のまま変化しなかった。すなわち、10月中旬以降は気象要因による疫病発生のリスクはほとんどなかった。したがって、萌芽日を遅らせる(播種日を遅らせると)と疫病のリスクは低下する。一方、夏バレイショは萌芽から少なくとも45日間の生産期間が必要なので、著しく播種期を遅らすと12月に霜害を受ける可能性がある。農家にとって、夏バレイショの生産は疫病と同時に早霜の警戒が必要である。

 2016年の全圃場病害調査では、9月20日に上流部で疫病の病変葉を少数発見した。10月に入ると、広い範囲で病変葉が観察できた。FLABSによる疫病発生の予測結果と整合する。2015年に病変葉を見つけることが難しかったのと、大きな違いがあった。

 2017年の冬バレイショ生産期間の感染好適指数の算出結果をFig.28に示した。降雨がない日が続き、3月7日以前の萌芽日では、感染好適指数は 0 であった。3月は気温が徐々に高くなることもあって、この季節の降雨はバレイショ塊茎の肥大を促進し、潅漑によっても単収が増加する。萌芽日が3月8日の場合は3月下旬に21に達し、疫病危険期になった。

 2017年の冬バレイショの播種作業の進捗状況を地帯別にみると、2016年12月末に上流部Ⅰにある幹線水路付近でもっとも早く播種され、年が明けて、ゾーンⅡで播種が始まった。1月中旬にはサリナディ川から直接取水するゾーンIIIで播種が終わった。冬バレイショ播種時の気温は低く、種イモの植え付けから萌芽までに1ケ月間以上を要する。もっとも早く播種された上流部Ⅰの圃場では1月末に萌芽した。2月初めに好天が続き、2月中旬にはゾーンI、IIのほとんどの圃場で萌芽した。

Fig. 27   Forecast of the first day of late blight occurrence, Summer potato season, Aug.25 – Dec.24, 2016

Based on the weather data collected in Sankhu by farmers group

 Fig.28  Forecast of the first day of late blight occurrence, Winter potato season, Dec.25, 2016 – Apr. 30, 2017

Based on the weather data collected in Sankhu by farmers group

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