4-3 FLABSによる疫病危険期到達日の算出結果
夏バレイショと冬バレイショの疫病危険期到達日(NDr)の算出結果を Table 8 に示した。NDrは夏と冬とでは大きな違いがある。夏のNDrは小さく、冬のNDrは大きい。バレイショを早植えし、9月に萌芽した場合、その6日後には危険日に到達する可能性がある。これに対して冬は1月下旬に萌芽した場合、危険日に到達するのは早くても16日後である。平均値では、それぞれ16日と67日後であり、4倍もの差がある。
Table 8. Mean and variation of the days from plant emergence to the risk of late blight outbreaks (NDr) by various emergence period of summer potato during 1971-2014
a)夏バレイショ
夏バレイショ栽培における疫病の危険期到達日数 (NDr) を、特徴的な年について、Fig.16 に示した。NDrは萌芽期が 8 月の場合には、多くの年次で 7-8 日間であった。萌芽期が 9 月になると危険期到達日数は著しく長くなる年次 (例: 1981) がある一方、9 月中~下旬に至るまで 8 月と同様の年次 (例: 1994 と 2011) があり、同時に、10 月中旬に至るまで約 10 日間と短いままの年次 (例: 1971) が認められた。
危険期到達日数の平均値は、萌芽期が 9 月中旬では 12 日間 (変動幅: 6-40 日間)、10 月中旬では 28 日間 (8-70 日間) であり、栽培時期が遅くなるに応じて長くなった (Table 8参照)。ただし、萌芽期が遅くなったときの変化は、最短日数 (Table 6でのmin) では小さく(主要栽培期間において 6 -> 10 日間)が、最長日数 (同 max)で大きかった (同 32 -> 80 日間)。
Fig. 16. Examples of daily rainfall and the number of days for the risk of
potato late blight outbreak (NDr) in summer potato cultivation.
b)冬バレイショ
冬バレイショ栽培での危険期到達日数 (NDr) は萌芽期が 1 月では、多くの年次で 60-110 日間と長かったが、10-30 日間と短い年次 (例: 1982) も認められた (Fig. 17)。いずれの場合も萌芽期が遅くなるにともなって危険期到達日数は短くなり、萌芽期が 3 月になると降雨日が増え、気温も上昇し始めるので 20-60 日間と短くなった。
冬バレイショ栽培における危険期到達日数の平均値は、萌芽期が 1 月初~中旬では 75-81 日間 (最短は 16-25 日間、最長では 116 日間)、2 月下旬では 45 日間 (13-70 日間) であった ( Table 8 )。なお、危険期到達日数が 90 日間 (3 ヶ月間) 以上であることは、ほぼ全生育期間中 (収穫期まで)、疫病の発生がないことを示す。
Fig. 17. Examples of daily rainfall and the number of days for the risk of
potato late blight outbreak (NDr) in winter potato cultivation.